歴史と風情
まちを歩けば新たな発見
今年7月、「佐渡島の金山」は世界文化遺産に登録され、
「島の宝」から 「世界の宝」となった。
だが、島の魅力は金山だけにとどまらない。 豊かな食や絶景、伝統文化など
季節ごとに異なる顔を見せる佐渡。
佐渡市相川地区を巡り、お薦めのスポットを紹介する。
「佐渡島の金山」が世界文化遺産に登録 されて以来、観光客は増加し、島は活気 づいている。 約20人のメンバーが相川市街地・金山周辺の名所旧跡を案内する「佐渡 相川ふれあいガイド」会長の斎藤本恭 さん(72)も「県外ナンバーの車が目立ち、これまで佐渡を訪れたことのない人が来るようになった」と登録の効果を肌で感じている。会では「北沢浮遊選鉱場散策」「佐渡奉行所周辺散策」など定番の6コースのほか、観光客のニーズや滞在時間に合わせ、さまざまなスポットを巡っている。「入念に下調べをしてきた人もいれば、そうでない人もいる。お客さんの興味や知識の深さによって、話す内容も変えていく」。観光客に佐渡の歴史を知ってもらい、いかに満足してもらえるか。「そこがガイドの腕の見せどころ」と斎藤さんは力を込める。
佐渡相川ふれあいガイド会長
斎藤 本恭(さいとう・ほんきょう)さん
佐渡市北狄(きたえびす)在住。普段は地元の寺の住職を務める。市職員として金銀山の調査にも携わった。ガイドではこの経験を生かし、歴史分野を得意としている。
斎藤さんが特に一押しなのが、江戸後期の佐渡奉行が眠る総源寺や、佐渡最大級の五輪塔が立つ法然寺、江戸時代の山師、 味方与次右衛門一族の墓が並ぶ法輪寺といった金山の歴史とも深く関わるお寺の数々だ。いずれも観光客が一人で訪れる 機会は少ない。パンフレットには出て いない、歴史の裏話を聞けるのも、ガイドによる案内の魅力の一つという。
また、高台からの美しい景色を眺め、 散策するのも心地よい。風情ある京町通り周辺では、八百屋町や米屋町、味噌屋町といった地名が目に入る。金山の発展とともに栄え、最盛期には約5万人が生活した 鉱山都市相川。往時の暮らしやまちの移り変わりに思いをはせながら気ままに歩けば、思わぬ所に、自分だけの発見があるかもしれない。「一度訪れただけでは、佐渡の魅力を 全て知ることはできない。リピーターになってほしい」と斎藤さん。金山から生まれた 文化や芸能、そして豊かな食。何度来ても佐渡には新たな出合いが待っている。